愛の木霊 (リフレイン)



そうだね 考えたことないけど

岩城さんが桜の精だとしたら 俺は何だろうね

桜の守なんて いいかもしれない

はらはらと零れる 岩城さんの愛に埋もれてさ

果てしない悠久の時を 一緒に漂って







うん わかるでしょ

本当に岩城さんには 桜が似合うよね

っていうか 木の花がとても似合う人なんだよ

椿や 梅も あの人にはぴったりだ

あでやかな花であり 雄々しい樹木でもあり







桜の精だったとしても 妖精じゃないと思うよ

そんなちまちました 少女めいたイメージじゃなくて

臈たけた古木の精霊とか あやかしの夢魔とか

しんとした森に棲む 異形の者とかね

魅入られたら最後 魂まで持っていかれちゃう







あはは うん そうなんだよね

俺にとって岩城さんは そういう存在なんだよ

あの蠱惑の瞳に からめとられて

身動きできないほどに 息苦しいくらい

愛して 愛されてるんだもん







そりゃあね しょうがないよ

このくらいの自信がなかったら 俺はとうてい

あの人の伴侶なんて やってられない

めちゃくちゃに惚れて 骨抜きになってるけどさ

岩城さんも同じくらい 俺に夢中だって思ってるよ







だってこういうのって 男のロマンでしょ

とびっきりの美人と出会って 恋に堕ちて

百億年に一度ってくらいの 大恋愛をして

幸せいっぱいで結婚して 一緒に暮らしてるんだよ

それ以上の幸せって この世にあり得なくない?







泣きたくなるくらい めろめろに惚れてる相手が

俺だけだって ほかには何もいらないって

この腕の中で毎晩 誓ってくれるんだよ

ありったけの愛情で 俺を包んでくれるんだよ

そりゃあ命を賭けて 守らなきゃって思うさ







俺にとっては 岩城さんが世界のすべて

つらいときに支えてくれる 確かなぬくもりであり

荒んだ心をやさしく癒してくれる とろける甘露であり

俺の飽くなき奔流を しなやかに受け止めてくれる

誰よりも妖艶な 永遠の恋人でもあるから







ああ ほら見て 春の風が吹いて

桜の花びらが ひらひらと水面に舞い落ちる

しづ心なくって 本当にそう思っちゃうよね

こんなに綺麗なのに 散っちゃうのが惜しい

池に降りいそいで さざなみに揺れて







華はいつか枯れるし 時は流れ去っていく

岩城さんも俺も 出会ったときから10年経って

いろいろ経験したし 歳を取ったって思う

でもそれは 幸せなことなんだよね

一緒に過ごした時間が それだけ長いってことだから







岩城さんが今ここに いてくれればいいのに

あはは 本当にバカみたいでしょ?

でも 綺麗なものを見ると いつもそう思う

男は幾つになっても ロマンチストだからね

どんなときでも 恋人との甘い時間を夢見るんだ







見せてあげたい 手をつないで一緒に見たい

どんな反応をするのか この目で見たいんだ

うん そうだね 確かに想像はできるんだけどさ

ほっこりと微笑がこぼれて 俺を見つめて

綺麗だなって うっとり呟くんだ







爛漫のさくらよりも 岩城さんはもっと綺麗で

もっと端正で もっともっと甘やかに匂うんだよね

凛とした気品と 清かな佇まいと

誰をも虜にせずにはおかない 鮮やかな色香

とんでもない人だって思うよ 実際!







岩城さんのこと以外に 話すことはないのかって?

あはは ごめんごめん またやっちゃったね

救いようのない馬鹿だって 自分でも思うけど

本当にほかに なんにも考えてないんだ

寝ても醒めても あの人しか見えないから







ヤバい奴だって 言われちゃうかもしんないけど

俺はマジで 岩城さんにいかれててさ

これが永遠に覚めない夢なら それでもいいよ

骨の髄まで あの人に狂わされたまま

あの人に溺れて 生涯を終えたい







もしかして俺 しゃべりすぎ?

止まらないんだよね 岩城さんのことになるとさ

愛してるって千回言うでしょ そうすると

万の愛の言葉で 思いの丈を返してくれるんだ

それも黙ったまま ほんの甘い眼差しひとつで!







はいはい もうお終いにするよ

いつまでも桜が散るのを見てると 淋しくなるからね

靴を拾って 携帯をポケットから出して

岩城さんにちょっとメールを 入れておこうかな

仕事が終わったから 今から家に帰るって・・・







終わり

藤乃めい

2007年11月25日

Thanks!
眩しいほどにすっかり大人になって、穏やかな落ち着きを身につけた香藤くん。滴るようないい男ですが、それでもチャンスさえあれば、こうやって延々と岩城さんのノロケ話をしてるんだろうなあ(笑)。
Uploaded 29 November 2007


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