※これは「2008年カレンダー萌え企画」で突発リレー連載中の、【007岩城さんシリーズ】の番外編です(笑)。できれば、そちらを先に読んでくださると嬉しいな(香藤くんの表紙イラストから始まります)。





キスが足りない/あなたが欲しい











「岩城さん!!」



見つけた途端、俺は全速力で駆け出してた。

信号無視して、ストリートをひとっ飛び。

黒塗りのロールスロイスが、不機嫌なクラクションを鳴らした。



「おまえ、なんでここに・・・」



人目もはばからず、熱烈な再会の抱擁!

やっとやっと、捕まえた。

問答無用で、俺は岩城さんの唇を塞いだ。



「ば・・・」



バカ、なんて言わせない。

強引に壁に押しつけ・・・たかったけど。

残念なことに、そこは普通の歩道だった。

だからバス停は、言ってみれば代用品。

・・・いまいち、ロマンチックに欠けるよね。



「会いたかった、岩城さん」

「・・・なに言ってんだ」



官能を煽る、濃厚な大人のキス。

すごく情熱的な、でも甘いキスを繰り返す。

とにかく俺は好きなだけ、岩城さんを貪った。



好きにしろって感じで、ひょいと肩をすくめて見せたけど。

岩城さんは、俺を拒まなかった。



「・・・んっ・・・」

「岩城さん・・・っ」



俺は胸を喘がせて、目の前の端正な色男を眺めた。

はっきり言って、水も滴るいい男。

ああ、なんてカッコいいんだろう。

あくまで余裕シャクシャクなのが、なんだか憎らしいほど。



・・・はい、わかってます。

岩城さんは、どこをどう取っても見るからに男。

ここまでホンモノだったなんて、自分でもびっくりだよ。

でも、マジで愛しい。

ホントの本気で惚れちゃってるから、タチが悪い。

あなたが俺を、狂わせるんだ。



「置いてけぼりなんて、ヒドイよ」

「どうして俺の仕事(ミッション)に、お前を同行する必要がある」

「・・・冷たいなあ」

「おまえの頭がおかしいんだ」

「・・・やっと会えたのに、そこまで言わなくても」



なるべく可哀相に見えるように、俺は眉を寄せた。

岩城さんに通じそうな、俺の魅力ってなんだろう?

何をどうしたら、岩城さんは俺を好きになってくれる?

・・・思いつかないのが、すっげー悔しい。



実際、みっともないってわかってるよ?

いまだかつて、女に不自由したことないこの俺サマが。

つれない恋人・・・もとい、片恋の相手に翻弄されて。

ちょっと近づいたと思うたびに、あっさり逃げられてさ。

地中海からイギリス海峡、それからスイス・アルプス。

白亜のリゾートホテルから、おどろおどろしい朽ちた洋館まで。

俺ってば、岩城さんを追いかけて三千里だもん。



「やめろって」



岩城さんは、軽く俺をいなして後ずさった。

・・・す、すみません。

ついつい調子に乗って、美味しそうなお尻、撫でちゃいました。



「あん、もう・・・っ」



周囲にはいつの間にか、ギャラリーができてた。

・・・そりゃまあ、この国じゃゲイなんて珍しくないけど。

それでも、こんなのはめったに見られないだろうな。

デカイ東洋人の男がふたり、街中で堂々ラブシーン。

っていうか、俺ひとりで愁嘆場?



大胆不敵って、嫌じゃないけどね。

俺はこういう視線に、燃えちゃうほうなんだ。



「・・・んんっ・・・」



バス停のビルボードに、岩城さんを縫いつけて。

俺はむしゃぶりつくように、彼の唇を再び味わった。

だってほら、その半開きの濡れた唇・・・!



「・・・ったく、おまえは」



耳元にかすかに、ため息が聞こえた。

岩城さんの声って低くて色っぽくて、腰に来るよね。

悪態つかれるのすら、なんだか快感になってるかも。



「もっと・・・もっと・・・っ!」



外野は無視して、俺たちは長いキスをした。

なんたってここは、世界でいちばん美しい恋の街だ。

ちょっとやそっとじゃマスターできない、キス講座上級編。

岩城さんの白皙が、ほんのりピンクに染まるまで。



もうちょっとだけ、あなたに触れていたい。

お願いだから、逃げないで。

今だけでもいいから、俺の腕の中にいて。

いや、ホントはずっと、俺のものでいて欲しいんだけど・・・!



「・・・夢中なんだよ、俺・・・」



そっと囁きながら、マジで涙が出て来そうだった。

俺ってこんなに、センチメンタルだったっけ?

ってか、懇願してるよ、この俺が!



「バカだな・・・」



俺があんまり情けなくて、少しは同情してくれたのか。

岩城さんが甘くつぶやくのが、聞こえた気がした。












藤乃めい
29 February 2008
Uploaded 8 March 2008



2008年4月号のGOLD表紙、あの欧羅巴のバス停でキスをするお二人。余裕かましまくり(笑)のオトナな岩城さんと、彼をがっしり全身で覆い込んでキスを貪ってる香藤くん・・・いやあ、ものすご〜く萌え心を刺激されてしまいました。結果がコレです(苦笑)。

ちなみに、この小品の当初の舞台設定はロンドンだったのですが、壁紙の都合でパリになりました(笑)。大人の恋人たちが、情熱的に愛を交わす街というと、これしか思いつきませんしね。(写真素材と加工はすべて自前です♪)